サッカー解説者のサッカーを見るチェックポイントを勉強しようと
購入してしばらく放置していた本。
こないだの旅行カバンに入れてちょこちょこ読んでいたら、
今の自分に必要なことが書いてました。勉強になったので紹介します。
2002年W杯(日韓共催時)の日本代表(ボランチ)です。
フリーの解説者で地方在住、週1試合からスタートして、
今では日本サッカー中継のエース解説者です。
Youtubeチャネルでオリンピックの解説もされてます。
(とても分かりやすい)
「戸田和幸が引退を決めた試合」のエピソードが面白い。
第3章の最初の6ページは、中間管理職の人全員に読んでほしい。
(概要)
・シンガポール移籍まで
Jリーグ→イギリス1部→オランダ1部→J1数チーム→韓国→J2→ときて
キャリア晩年。シンガポールSリーグから特別枠でオファーが届きます。
クラブ側の期待は「経験を後進に伝えること」
当時36歳。将来は指導者を見据えていた戸田にとって
「良い経験になる」と考え、シンガポールへ渡ります。
・シンガポール生活のスタート
一応プロリーグだけど、学生は授業優先で練習を休むし、楽しくサッカーをしている。
戸田から見ると足りないことばかり。色々と伝えようとしますが、
選手・監督を含めて、自分の知識は求められていないと感じました。
それでも、相手の目線に合わせることを心がけて、
少しずつチームがいい方向に進む。
・戦術の概念がない
シンガポールのチームはだいたい4-4-2(一番オーソドックスな戦術)。
ピッチコンディションが悪いので、前線の外国人選手にロングボールを入れて
戦うチームがほとんど(日本でも、下部リーグに多い)。
人工芝で芝が荒れていないとボールを追いかけるだけ。
あるチームとの対戦。そこは日本の指導者が監督をしています。
そこはシンガポールでは唯一、戦術を意識して戦うチーム。
選手の質は(日本の基準では)あまり高くないが
シンガポールでは非常に強い。
理由はシステムの違い(4-3-3)。
システムごとに得意不得意があるので、違うシステムなら違う攻め方をするものだが
シンガポールのチームは、4-4-2相手と同じ戦い方をしている。
おそらく、システムの違いに気づいてない。
・試合中のシステム変更で快勝
そのチームとの対戦。
試合中、戸田の指示で1-5-4にシステム変更し、3対1で逆転勝利。
「相手のシステムの弱いところを突く」という基本的な対策をやっただけですが。
戸田としては手応えを感じます。
ただ、選手としてできることに限界がある。
これは監督の仕事だし、それ以前に、
勝因(システム変更)に気づく人が周囲にいません。
「周囲がその程度なら、自分もその程度の選手なのか」
そう考え、引退を決意した。
(あくまで要約:都合で変更してる箇所があります)
要約部分がぜんぶ言いたいことなので
これ以上要約する必要はないのですが、僕の感想としては…
1.基本概念の説明(戦術とは、システムというレベル)から指導するには
現場レベル(選手の立場)がシーズン途中から教え始めるのは
無理がある。せめて監督が、シーズン始動時から始めないと。
成果が出るまで数年かかるだろうし、国の協会が組織的にやる仕事だ。
2.周囲の環境が自分の基準より低い場合、どう動くか。
「後進の指導」を任されるなら、自分より仕事のできない人しかいない。
(来日直後のジーコは、怒ってばかりだったらしい:よく来てくれた)
3.求められてないアドバイスはやっても仕方がない。
関係を築いて、聞いてもらえる状況にするのが先。
(年齢差のある上司・部下でコミュニケーションが取れずに困ってる人は
多いと思う)
4.最後の「辞め方」、言ってることはもっともだけど、
期待されていたのはコーチ兼任のような位置づけで、
選手としての能力だけで雇われたわけではない。
周囲のレベルが低い、自分の選手としてのレベルが低いというのは
最初から分かっていたことじゃないか。
(もちろん、シンガポールに骨を埋める必要はないけど)
半分くらい読んだ感じでは、戸田和幸自伝部分が一番面白い。
もう少し掘り下げて書いて欲しい…けどたぶんオファーは断るでしょう。
ぜひ読んでください。