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「速いシュート」は戦術を超越する:オリンピック水球男子を振り返って(214)

東京五輪のピクトグラム「水球」(Tokyo2020提供)

水球男子決勝は、東京2020オリンピックの最終種目。”大トリ”です。

 

ギリシャの初優勝か、セルビアの連覇か。

3Qまで同点にもつれる接戦を制し、

王者セルビアがオリンピック二連覇を果たしました。

 

アーカイブはこのへんから

sports.nhk.or.jp

 

 

もっと上手いチームはあった

セルビアより技術的に上手いチームはいっぱいありました。

イタリア・ギリシャは、退水セットもハンズアップもすばらしかったし

ハンガリーのキーパーは違う生き物みたいだった。

ジャパンのキーパー棚村も、いい選手でしたよ。

 

戦術的には、日本のパスライン(ともう一つのシステムの切替)の方が

ずっと洗練されてます。

セルビアは、どちらかといえばオーソドックスな戦術。

ゆっくりセット組んでゆっくり攻める。退水取れたらパワープレー。

速攻はやらないので、見てて退屈な試合運びです。

 

セルビアが金メダルをとったのはなぜか

理由は二つ。

一つ目は、予選リーグと集中力が全然違うこと。

 

予選リーグが3勝2敗で「あれ?」だったのが、

決勝トーナメントが3連勝。

倒したのは、イタリア・スペイン・ギリシャ(!)

 

「勝ち方を知っているチーム」というやつ。

 

二つ目。

この競技。ボールを投げてゴールに入れると、点が入ります。

チーム力に差がないときは、何周か回って

「誰も止められないシュートを打つ」奴が強い。

 

セルビアは、戦術を無効化するシューターが2人と

退水しないと止められない190センチのフローターがいました。

(フローター:サッカーのワントップのFW、バスケのセンターです)

 

セルビアのフローターは、普通ならペナルティスローになる

潰され方をしても普通のシュートを打ってくるし

中をケアすると外が空いて、フリーのシューターがミドルシュートを決めてくる。

 その「ミドル」も、シュートスピードが速いから、

至近距離のと同じスピード(ゴール到達時:終速)。

どないせいっちゅうねん。

 

どのスポーツでも、飛び抜けた個人技があれば、戦術が無効化されます。

チームスポーツだけど、最後は「個の力」。よく見る風景です。 

 

学んだこと

予選リーグでセルビアの試合を見て、思いました。

「その手があったか!」と。

 

僕は現役時代、シュートはチーム一速いけど

スピードもスタミナも技術もない選手でした。

 

セルビアの戦いを見てると、

速攻をかけないならスプリントは必要ないし、

攻守交代はゆっくり泳いでセットを組むので、スタミナもいらない。

 

「長所を伸ばす」というのはこういうこと。

できることを、できる場所でこなして、仕事が終わったら別の人に交代。

 

戦線が膠着したら投入するインパクトプレーヤーとしてなら

生きる道があったんじゃないか。チャンスの代打みたいなやつ。

他の能力は、試合に出始めてから鍛えればいい。

 

サッカーなら「技術のないストライカー」

野球なら「フォークを投げると必ず空振りするスラッガー」

「ストレートが遅いけどスライダー投げたら打てない左のワンポイント」

いくらでもいますよね。こういう一芸入社組。

 

現役時代はずっとオールラウンダーを求められてた(ので辛かった)けど、

幼少期からセルビアで育ったら違う現役生活が送れたと思う。

 

もう一回、アスリートとして真剣勝負がしてみたい。

スポーツは、試合を見るより、自分でやるほうが100倍楽しい。

 

ちなみに日本のチーム戦略は

「セットを組んだら体格でも技術でも負ける」

「ショートカウンターからの速攻勝負」

「無限のスタミナで体格・技術の差を乗り越える」です。

 

こう書くととても頭が悪い作戦ですが、理にかなってます。

 

ギリシャやハンガリーだと190センチ台の選手がごろごろいます。

コンタクトのあるボールゲームで、平均身長が10センチ以上違うと

試合にならない。

 

どれだけ筋トレしても身長は伸びないし、

190センチの選手はバスケやバレーボールに行ってしまう。

運動神経のいい選手は野球かサッカーにいくから、

そもそも水球のようなマイナースポーツはやらない。

(ラグビー・アメフトでさえ勧誘に苦労してるのに、水球はその比ではない)

 

自分の持っているもので、鍛えれば伸びる要素を軸に戦略を考える。

一瞬のスプリントは才能がいりますが、

スプリントを1試合に何本もこなす能力は、練習すれば身につきます。

 

大本監督、クレバーな戦術家ですよ。

本人は否定するかもしれないけど、めちゃくちゃ頭が良い。

(大本語録は別にまとめます)

 

ポセイドンジャパン、よく戦った

水球日本代表”ポセイドンジャパン”は本当に強かった。

 

初戦のアメリカ戦(2点差で敗戦)を見たとき

「ジャパンがオリンピックで勝つ姿を見たい」という夢は

胸にしまいました。

 

このチームは、全敗するチームじゃないし、1勝できて万歳するレベルじゃない。

選手達は、もっと上を目指して戦ってる。その実力もある。

僅差で負けたのを「良い試合したね」と喜んでいては、選手たちに失礼だ。

 

今大会は、予選リーグのこり全勝して、決勝トーナメントへ。

その先は、やれるだけやる。リオの全敗から4年。

さあ結果を残す時がきた。

 

結果

www.gorin.jp

 

↑でハイライト動画が見れます

 

アメリカ戦は2点差で競り負け。

ギリシャ戦、ラスト40秒まで同点だったが、最後に勝ち越しを許す。

ハンガリー戦も前半は同点。後半突き放されての三連敗。

ここで予選敗退が決定。

 

イタリア戦は何も出来ず、これで4戦4敗。

最後の南アフリカ戦で待望の初勝利。

24-9。これは強かった。 37年ぶり、ロサンゼルス大会以来の勝利。

 

結果は1勝4敗。

 ”日本水球史上最強”ポセイドンジャパンのチームが残した結果です。

 

1試合でも観た人なら

「ポセイドンジャパンは弱かった」と言われれば

めちゃくちゃ怒るでしょう。どこと戦ってると思ってるんだ、と。

 

誰が見ても「強い」と分かるチームでも、わずか1勝です。

 

ジャパンは「世界と戦えることを証明」する段階は終わってて、

結果を残す段階に入ってるんじゃないか。

決勝トーナメントの緊張感の中で優勝候補と一発勝負するのが必要なんじゃないか。

 

決勝トーナメントはやっぱり雰囲気が違うし、

決勝トーナメントで戦わないと、強くならない。

 

「1勝した」で喜んでる人は誰もいないだろうけど、

次の目標はどう設定するんだろう。

 

東京オリンピック対策で予算は積み増ししてたと聞いてるし、

結果が残らない→強化費減→元の弱いジャパンに戻る→次に勝つのは37年後

という未来が見えます。

 

ポセイドンジャパンがメダルゲームを戦う姿を見る。

その夢は、生きているうちに叶うんだろうか。 

 

「絶対に無理だと思ってた」夢が叶ったシーン、今大会でも何度も見ました。

長丁場になりそうですが、最後まで見届けたいと思います。

tokyo2020shop.jp

 

水球ピクトグラムグッズが売ってたので、購入しました。

もう1着買って、予備の方は東京オリンピック2068(次の東京開催?)に

着て行こうかな。