Suicaどっとinfo

ちびかんの公式ブログです。Suicaドメイン取りました

文豪聖地巡礼:島田清次郎の生誕之地&お墓へ行ってきた(240)

島田清次郎とは

金沢旅行の際、作家・島田清次郎ゆかりの場所に行ってきました。別の場所(北陸道:旧街道)に行く予定が大雨で、急遽こちらにしました。

 

「強烈な個性」という言葉は、島田清次郎のためにあります。大正期の作家で、いわゆる大衆作家。作品はもう忘れられてますが、キャラクターが強烈。奇人変人揃いの明治大正期文豪の中でも異彩を放ってます。

ja.wikipedia.org

note.com

 

金沢の遊郭の一室で育ち、家畜小屋で母子で暮らす極貧の中から20歳でベストセラー作家、文壇の寵児に。洋行、海外の作家との交流からの帰国後、23歳で令嬢誘拐事件を起こし人気が失墜。金に困り、ホテルや知り合いの家を転々とする日々を過ごすなか、25歳で血まみれの浴衣姿で人力車に乗っているところを発見され、早発性痴呆(現・統合失調症)と診断。精神病院に入院し、退院することなく31歳で病死。

 

映画化するなら、作品より作者本人だと思う(「地上」が映画化されてる)。

 

たまに見かける「体験したことしか書けない」タイプの作家。代表作「地上」は、ほぼ自伝です。続編では、ケンカ別れした友人知人を露悪化して、誰がモデルかを分かる形で小説に登場させるという、人間性を疑うことをしています。求婚して断られた女性の扱いとか本当に最低。態度が尊大で、文壇の先輩を下僕扱いする、家族には暴力を振るう、晩年(といっても24~5歳)の金の無心をするときもやたら偉そうで、追い払っても勝手に泊まり込む。数少ない親友とも絶縁してるし。

 

とにかく嫌な奴、絶対に友達にしたくない人間です。文壇の評判が悪いというより、関わった人全員から評判が悪いだろ、これ。

島清(愛称)の評伝が有名(直木賞受賞作)なのと、少年マンガで紹介されたので「過去の忘れ去られた作家」枠では、そこそこ知られています。2013年に精神科医が評伝を書いてて、精神病院入院後の創作活動にも焦点が当たっています。

 

島田清次郎生誕之地

IRいしかわ鉄道、美川駅。金沢駅から20分ほど。

色んな所でよく見る写真。美川駅から徒歩10分弱

どの顕彰碑も、清次郎の生涯については奥歯にものが挟まったような書き方をしています。「郷土の偉人」と手放しで誉めづらい存在

顔立ちが整ってるんですよね。当時、文学少年少女からカリスマ扱いされてたのも分かる。演説もうまいし。

日本海側を望みます。手取川の河口近く。港のすぐそば。父親が漁師だったからでしょう。風の強い日だったので、大変寒かった。手取川は「暴れ川」の代名詞。この辺りも水害で家が全部流されれ、生誕地付近の区画が変わっています。

 

石川ルーツ交流館

生誕之地から内陸方面、手取川の上流方向も望むと、島田清次郎ファンのもう一つの定番スポットがあります。

石川県設置されたときに短期間だけ石川県庁があった場所です。元々は町営の施設(平成の大合併で白山「市」営に)で、展示施設+市民の会合の場という感じ。別室では地域の集会が行われていました。

 

行楽シーズンの土曜午後に行ったら入館者が誰もいなくて、展示室の電気をつけてもらいました。

 

石川県の歴史の紹介が中心で、郷土の偉人コーナーに清次郎の展示があります。同室の向かい側には、地元選出の国会議員(名誉町民)の展示。どっちかの展示は、あとで作ったんでしょう。

note.com

 

↑詳しい人の紹介記事です。

 

中学時代の作文が最高でした。ロビー前に小さな図書コーナーがあって、郷土史関係の資料が閲覧できます。地元の新聞・会報に載ってる島田清次郎関係記事がファイルされてて、どれも面白い。父親の生年が諸説あって、実際はどっちだ、とか。「地上」全巻を置いてるのも素晴らしい。次回は土日両方を使って、資料を全部読もう。

 

島田清次郎の墓

石川ルーツ交流館から徒歩20分強。潮風が冷たい

30年前に作った看板

「ここに」には何もなくて、中央、古い方の墓石が清次郎の墓。

真ん中のやつ。切り株状の看板の手前

中央が島田清次郎の墓。どこからどうみても普通のお墓。家は断絶してるし、清次郎は縁者から絶縁状態。後援者もいない。お母さんが苦労して立てたんだろうか

平成5年に一緒に作ったみたいです

手入れはされてるけど、お参りにきた形跡がないのが寂しい。

中に入ってるのはおそらく清次郎一人です

「363-3島田正」がそれ。

 

島田清次郎文学碑

墓地の中にあります。部分的に消えてて読み取れない(海のすぐそば、浜風の強い場所です)

ここまでの4箇所は、だいたいの人はセットで巡礼します。美川だと他に「呉竹文庫」があるんですが、能登地震の影響で臨時休館中でした。

 

まとめ

人間、死に方と死んだ後は制御できません。精神病院入院の経緯は(9割方は自業自得とはいえ)不幸ですし、亡くなった以降、令和の現在での扱いも粗末です。浜辺の簡素なお墓を見て、何か感じるものがあります。「本がよく売れた」以外に推せる要素が少ないし、ベストセラー作家なのに、現在では誰も作品を読んでないことが悲しい。作家なら「作品」で覚えられれば救われます。

 

そういう私も、島田清次郎の作品はほとんど読んでませんが、少なくとも「生涯」と「評伝」は、エンターテイメントとして一級品です。ファンでなくて、引きつけられる「何か」があります。文豪とアルケミスト(ゲーム)のおかげで認知度が上がってるので、これから復権するかもしれません。

 

行ってよかったです。次回は、金沢市内に育った場所の跡地へ行ってみます。

 

(参考)

note.com