「事業をサポートする」というタイトル通りの本。
通常の入門書ではすっぽり抜けてる「調査」と「権利行使」のお話が大変詳しい。
入門書なのに、知ってるノウハウを詰め込んでるせいで情報濃度が非常に高いです。
目次
PART1 事業支援のための知財活動と特許調査
Theme1 知財活動と事業のサポート
Theme2 特許公報の種類と読み方
Theme3 パテントマップに基づく動向調査
Theme4 特許調査の概要と検索手法
Theme5 他社特許調査による特許リスクの未然予防
PART2 開発現場から生まれる技術の特許による保護
Theme6 特許出願と特許要件
Theme7 特許登録のための特許審査対応
Theme8 外国での特許の取得
PART3 デザイン・ネーミング・キャラクターの保護
Theme9 意匠制度によるデザインの保護
Theme10 商標に化体する信用の保護
Theme11 著作権によるキャラクターの保護
PART4 知財にまつわる係争と、事業の保護・支援
Theme12 知財権侵害警告・訴訟への対応
Theme13 知財権活用による事業の保護
Theme14 海外における模倣品対策と税関対応
Theme15 知財に関係する諸契約と注意点
だいたいの入門書は「特許とは」から始まり「発明発掘」から本題に入る構成なのですが、
この本はちゃんとしてます。出願前の調査も、侵害対策の調査もしっかり書いてます。
企業法務で大事なのは、こっちの方ですからね。
出願業務の前に侵害予防調査をやれ、という話はよく聞きます。
出願の話も凝ってて、架空の案件(ホバリング掃除機;ダイソン???)を題材に
先行文献も一から考えて、その関係を説明してる。
いつまでも灰皿や消しゴム付鉛筆でお茶を濁してる関係者は反省してほしい。やればできるんだ。
あと、特許調査と係争関係にかなりの分量を割いてる。
初学者とはいえ、「権利行使されたらどうなるのか(逆はあまり考えない)」は気になるところ。
この本でも、警告書対応から訴訟の流れ、海外での訴訟(!)まで簡潔ですが必要十分な説明がされてます。
この辺、有料の研修(能力担保研修)を受けてないと弁理士でも知らないとこだぞ。
係争関係は基本的に弁護士が、14章の模倣品対策は元東京税関職員の弁理士が書いてる。いずれも専門家の中の専門家ですね。
実務で必要となりそうな部分にピンポイントで実務経験が得られるこの本、
この値段(3400円+税)です。
入門向け研修としても見たことのないクオリティ(編成&各論)なので、
法務部&知財部全員に配っても元は取れると思う。
とにかくバランスがいいのが特徴。
構成とページ配分が抜群にいい。内容は少し頑張りすぎな嫌いがあるが、それは実務者が書いてるから仕方ない。
「これは編者というより編集者の力だな」と思ったら、編集プロダクションが倒産してた。
中央経済社の知的財産法の書籍は、法律書・実務書ともレベルが高いので、どれもおすすめです。
(優秀な編集者が担当してるんでしょうね、きっと)
一冊だけ挙げると、奥田百子先生の翻訳の本とか。